2026.03.31
投稿日:2026.03.31 最終更新日:2026.03.31
工場にエアコンを増設しても暑いままで、熱中症のリスクが一向に下がらない。
2025年6月に施行された改正省令には対応したが、WBGTの管理や記録まで手が回っていない。
こうした状況が続く理由は、たいていの場合ひとつです。
「工場には、エアコンでは冷やせないものがある。」
金属屋根は夏場に60℃前後まで熱せられ、空気を介さず作業者を直接加熱する「輻射熱」を放ち続けます。
エアコンは空気(対流熱)を冷やす装置であり、この輻射熱には働きかけられません。空調を増やしても暑いままなのは、熱の発生源そのものが放置されているからです。
静岡大学の実験では、遮熱シートで輻射熱を遮断したところ室温-9℃・電気代‐27%削減という結果が出ています。輻射熱を止めれば、既存の空調が本来の力を発揮し始めます。
2025年6月の義務化で求められる体制の整備、WBGTの管理と運用、そして工場特有の熱中症リスクを根本から下げる設備・個人対策まで、設備管理責任者・安全衛生担当者向けに解説します。
山創株式会社 代表取締役
2016年創業以来、遮熱シート「サーモバリア」施工一筋で全国40都府県、1,200件以上の実績を持つ。工場・倉庫の「エアコンが効かない」「電気代が高すぎる」といった作業環境の悩みに、特許取得のスカイ工法と高性能遮熱シート「サーモバリア」で応え続ける。
目次

対策は大きく「設備・環境の改善」「運用・管理」「個人対策」の3つに分けられます。
設備で暑熱環境そのものを改善し、運用で日々の管理を徹底し、個人装備で作業者を守る。この3層を組み合わせることで、どれか一つでは補いきれない部分をカバーできます。
以下、優先度の高い設備改善から順に解説します。
設備・環境の改善は、WBGT(気温・湿度・輻射熱を組み合わせた暑さ指数)そのものを下げる対策です。運用や個人装備でカバーできる範囲には限りがあるため、設備から手をつけることで他の対策の効果も上がります。優先度順に整理します。
熱中症リスクを下げる出発点は、全体のWBGTを作業強度に応じた基準値以下に保てる環境を整えることです。改正省令の通達でも、WBGT低減策として「通風又は冷房設備」を設けることが例示されています。
全館空調で全体のWBGTを下げつつ、暑熱スポットには局所冷房で対応するのが現実的な設計です。屋内では除湿機能を備えた冷房が望ましいとされています。
換気設備による熱気の排出も有効です。換気には「局所排気」「プッシュプル」「全体換気」の方式があり、熱源が局所的に発生する工場では、全体換気だけでなく局所的な捕捉・排出を組み合わせると効果的です。
ただし、エアコンは空気(対流熱)を冷やす仕組みのため、屋根からの輻射熱が強い環境ではWBGTが下がりにくい場合があります。「エアコンを増やしても暑い」という場合は、次の遮熱対策を組み合わせましょう。
エアコンで対処できない輻射熱への対策として、遮熱シートの施工が注目されています。
遮熱シートは、アルミ箔の高反射性を利用して、屋根から侵入する輻射熱を反射する仕組みです。
遮熱シート「サーモバリア」は、アルミ純度99%の高反射シートで輻射熱を97%カット。
静岡大学の実験では、室温-9℃、省エネ-27%(電気代削減)という結果が得られています。
室内温度の低減幅は約5℃という実績データもあります。
遮熱塗料と比較した場合の優位性もあります。
遮熱塗料は5〜10年で再塗装が必要になりますが、サーモバリアは耐久15年。
長期的なトータルコストで見ると、遮熱シートの方が有利になるケースが多いのです。
特許取得のスカイ工法(両面テープで折板屋根にシートを貼り付ける工法)は、遮熱と防水(雨漏り防止)を同時に実現します。
工場稼働を止めずに施工できる点も、生産への影響を懸念する企業にとって大きなメリットです。
導入事例:有限会社大丸鉄工所様
施工前は夏場37℃以上だった工場内が、施工後は30〜32℃(マイナス5〜7℃)に改善。
「正直ここまで涼しくなるとは思ってもみなかった」とのコメントをいただいています。
遮熱シートで屋根からの熱負荷を減らすことで、既存エアコンの効きも改善します。
空調との併用で、より効率的な温度管理が可能になるのです。
全館空調だけでは対応しきれない局所的な暑熱スポットには、スポットクーラーや大型扇風機が役立ちます。
スポットクーラーは、吸い込んだ空気を冷風と温風に分け、冷風を吹き出す仕組みです。
作業者の近くに設置することで、局所的に涼しい環境を作れます。
ただし、温風(排熱)を逃がす経路が必要です。
排熱を屋外へ排出しないと、周囲が暑くなってしまいます。
排気ダクトの設計が、スポットクーラー導入の急所といえるでしょう。
大型扇風機やシーリングファンは、気流で体感温度を改善する効果があります。
ASHRAEの熱的快適性規格では、気流速度が一定値を超えると快適域が変化するとされています。
温度を下げきれない大空間でも、気流で「体感」を改善できるのです。
この「大空間をどう動かすか」という課題に対して、特に注目したいのがHVLS(High Volume Low Speed)ファンです。大きな羽根をゆっくり回すことで、一般的な扇風機では届かない広範囲に穏やかな気流を送れます。国産モデルとして株式会社西田技巧の「THE FIRST FAN」があります。
1台で工場用扇風機50台分の風量を、扇風機3台分の電力でまかなえるという数字が、この仕組みの実力をよく表しています。工場の広い空間で気流改善を検討する際、候補に入れてみる価値があります。
送風や局所冷房は輻射熱が強い環境ではWBGTが下がりにくい場合がありますが、WBGT実測で効果を検証しながら遮熱対策と組み合わせることで、暑熱スポットをより効果的に改善できます。

設備を整えても、運用・管理が適切でなければ熱中症は防げません。
休憩ルール、WBGT管理、暑熱順化など、日々の運用で実践すべき対策を解説します。
高温環境下での作業では、適切な休憩の確保が欠かせません。
環境省の資料では、WBGT基準値からの超過幅に応じた休憩時間の目安が示されています。WBGTの詳しい説明と基準値の一覧は後の章で解説します。
| WBGT基準値からの超過 | 休憩時間の目安(1時間当たり) |
|---|---|
| 1℃程度超過 | 15分以上 |
| 2℃程度超過 | 30分以上 |
| 3℃程度超過 | 45分以上 |
| それ以上超過 | 作業中止が望ましい |
この目安は暑熱順化者を想定しています。
暑熱順化が不十分な作業者(パートや派遣などの新規入場者、長期休暇明けなど)は、より長い休憩が必要です。
暑熱順化とは:暑い環境に体が慣れていくこと。完全に慣れるまで数日〜2週間かかり、慣れていない状態で高温の現場に入ると熱中症リスクが跳ね上がります。
休憩場所は涼しい場所を確保し、休憩時間を水分補給・身体冷却に有効活用します。
作業時間帯を早朝・夕方にシフトする、シフト制を導入するといった工夫も検討しましょう。
日常的なWBGT測定は、熱中症予防の基本です。
JIS適合WBGT指数計での随時把握を基本とし、以下の点に注意して運用します。
地域代表WBGT(環境省サイトなど)は参考にはなりますが、個別の作業場所を反映しません。
参考値は実測より低めになることがあるため、直射日光下、炉等熱源の近傍、冷房無しで風通しの悪い屋内では実測が必要です。
実測WBGT(衣類補正後)が基準値を超過した場合の対応フローを事前に定めておきます。
この対応フローを関係作業者に周知し、「迷わず対応できる」状態を作ることが大切です。
暑熱順化とは、暑さに体を慣らすことです。
順化が不十分な状態で高温環境にさらされると、熱中症リスクが大きく高まります。
新規入場者や長期休暇明けの従業員への対応がとくに大切です。
厚生労働省の資料によると、暑熱順化には以下の特徴があります。
夏本番を迎える前や、ゴールデンウィーク・お盆休み明けなどは、順化が失われている可能性があります。
作業計画に暑熱順化プログラムを組み込み、段階的に負荷を増やしていく運用が望ましいでしょう。

設備・運用の対策に加え、作業者個人が実践する対策も大切です。
水分・塩分補給と冷却グッズの活用について解説します。
熱中症予防の基本は、水分・塩分の適切な補給です。
厚生労働省の資料では、スポーツ飲料・経口補水液を30分ごとにコップ1杯(200ml)程度飲むことが推奨されています。
概算で1時間当たり400ml程度です。
ポイントは「のどが渇く前に」補給すること。
のどの渇きを感じた時点では、すでに体内の水分が不足しています。
定期的な補給を習慣化することが大切です。
塩分の補給も忘れてはなりません。
大量に汗をかくと、水分とともに塩分も失われます。
水だけを補給すると体内の塩分濃度が薄まり、熱けいれんなどのリスクが高まります。
スポーツドリンク、塩飴、経口補水液などで塩分を同時に補給しましょう。
なお、水分を摂らずに塩飴だけ舐めても効果はありません。
職場での補給環境の整備も欠かせません。
休憩場所に飲料水・スポーツドリンク・塩飴等を備え付け、作業者が定期的かつ容易に補給できる体制を作りましょう。
設備対策だけでカバーしきれない暑さには、個人用の冷却グッズが役立ちます。
厚労省のキャンペーン要綱でも、「送風や送水により身体を冷却する機能をもつ服やヘルメット」を積極的に採用することが推奨されています。
空調服(ファン付き作業服)
服に取り付けた小型ファンで外気を取り込み、汗の蒸発を促進して体を冷やす仕組みです。
作業中の深部体温上昇を抑える効果があります。
運用面では、充電を忘れないよう管理することが大切です。
冷却ベスト・冷却タオル
保冷剤や水で冷やして使用するタイプです。
空調服と併用することで、より効果的に体温上昇を抑えられます。
導入時のポイントは、他の対策と組み合わせて運用すること。
冷却グッズだけで熱中症を完全に防げるわけではありません。
WBGT管理、休憩ルール、水分・塩分補給といった基本的な対策と合わせて活用しましょう。
暑熱順化が不十分な新規入場者や休み明けの従業員には、優先的に配備することも検討してください。

工場が暑くなる原因は「輻射熱」「機械熱」「空調効率の悪さ」の3つに分けられます。
とくに輻射熱は見落とされがちですが、熱中症リスクを大きく左右する要因です。
熱の伝わり方には「熱伝導(固体内の熱移動)」「熱対流(空気や水の流れで運ばれる熱)」「熱放射/輻射(電磁波による熱移動)」の3種類があります。
このうち輻射熱は、空気を介さずに物体から物体へ直接伝わるのが特徴です。
工場に多い金属屋根(とくに折板屋根)は、太陽光を吸収して高温になります。
夏場の金属屋根は表面温度が60℃前後に達することもあり、外気温より15℃ほど高くなるケースも珍しくありません。
この高温化した屋根から放射される輻射熱が、室内の作業者を直接加熱します。
エアコンは空気(対流熱)を冷やす仕組みですが、体感温度は「室温」と「周囲の表面温度」の両方で決まります。国土交通省の資料によると、体感温度は「表面温度と室温の和のほぼ1/2」。屋根の表面温度が高いと、空気を冷やしても体感が下がりにくく、WBGTも下がりにくい状態が続きます。「エアコンを増やしても暑い」という場合は、輻射熱が原因になっているケースがほとんどです。
工場内には、製造機械、モーター、配電盤、加熱炉、乾燥炉など、稼働時に高温になる設備が数多くあります。
モーターは運転条件によっては表面温度が100℃を超えることもあり、蒸気配管や熱媒配管も高温の熱源となります。
厚生労働省のキャンペーン要綱でも、「炉等の熱源の近くでの作業」は実測によるWBGT管理が必要と明記されています。
これらの設備からは輻射熱と対流熱の両方が発生し、作業者の熱負荷を高めます。
対策としては、発熱体と作業者の間に遮へい物を設けること。
改正省令の通達でも例示されています。
天井が高く容積の大きい工場では、空調効率が低下しやすい構造的な問題があります。
暖かい空気は上昇するため、冷房をかけても冷気は床面に滞留し、作業者の高さまで十分に届かないことがあります。
技術資料によると、夏の晴天日に換気が十分な環境でも、工場内の高所は屋根下面温度の影響で外気より高温になる一方、低所は外気に近い温度にとどまるという垂直方向の温度分布が確認されています。
シャッターや搬入口などの開口部から外気が流入するため、大空間では空調に加えて換気・遮熱を組み合わせることが効果的です。改正省令の通達でも、「遮蔽・通風・除湿」の組み合わせが示されています。
WBGTは気温・湿度・輻射熱を組み合わせて熱中症リスクを評価する指標です。
気温だけでは見えない「輻射熱が強い屋内」「湿度が高い日」のリスクを数値で把握できるため、工場の熱中症管理の基準として使います。
工場の製造ラインで働く作業員(歩行を伴う中程度の作業)は区分2に相当し、WBGT基準値は暑熱順化者で28℃、未順化者で26℃です。重い材料の運搬や力仕事が多い区分3では25〜26℃まで下がります。まずこの数字を頭に入れた上で、自社の作業場を測定してみましょう。
測定にはJIS Z 8504またはJIS B 7922に適合したWBGT指数計を使います。黒球のない機器では輻射熱を正しく測定できないため、機器の仕様を確認してください。
炉や熱源の近く、直射日光下、冷房なしで風通しの悪い屋内は実測が必須です。環境省サイトの地域代表WBGTは参考値にとどまり、工場内の実態を反映しません。
| 区分 | 作業強度の目安 | 暑熱順化者(℃) | 未順化者(℃) |
|---|---|---|---|
| 1 | 軽い手作業、ゆっくり歩行 | 30 | 29 |
| 2 | 歩行が増える、荷車など | 28 | 26 |
| 3 | 重い材料の運搬、力仕事 | 25〜26 | 22〜23 |
防護服や二層の布製服を着用している場合は補正が必要です(二層の布製服:+3℃、蒸気不浸透性つなぎ服:+11℃)。
基準値を超えた場合は、WBGT低減策(設備対策)と作業時間短縮・休憩追加(作業管理)を組み合わせて対応します。大幅に超える場合は原則として作業を行わず、やむを得ない場合は単独作業を避け、管理者が頻繁に確認する体制を取ってください。
なお、遮熱シートで屋根からの輻射熱を遮断すると、WBGTの構成要素である黒球温度が下がり、WBGT値の低減につながります。
2025年6月に改正労働安全衛生規則が施行され、一定の高温環境での作業について、報告体制と措置手順の整備が義務付けられました。
対象となるのは、WBGT 28℃以上または気温31℃以上の環境で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われる作業です。工場の製造ラインや炉付近での作業は、多くの場合この条件に該当します。
報告体制:作業者が熱中症の自覚症状を持つ場合、または他者が疑いを発見した場合に、誰に・どう報告するかを作業場ごとに定め、関係者に周知します。
措置手順:「作業からの離脱→身体の冷却→必要に応じて医師の診察」という流れを作業場ごとに文書化し、周知します。緊急連絡先と搬送先も事前に確定しておきましょう。
違反時は最大50万円の罰則が科される可能性があります。
また、対策が不十分で重大災害が発生した場合、民事上の損害賠償責任を問われるケースもあります(2024年2月の福岡地裁判決では、熱中症死亡事案で4,800万円超の賠償が命じられ、2025年2月の福岡高裁でも一審を支持する判決が出ています)。
まず自社の作業場がWBGT 28℃以上になる時間帯・場所を把握し、報告体制と措置手順を整えることが出発点です。

熱中症対策の理想は、発症させないことです。ただ、どれだけ予防を徹底しても、発症リスクをゼロにするのは難しい。
だからこそ、「発症した場合に重症化させない」ことも対策の一部として位置づける必要があります。
死亡災害の多くで「初期症状の放置」「対応の遅れ」が指摘されています。軽症のうちに気づいて適切に対処できれば、重症化は防げます。「見つける→離脱→冷却→医療」の流れを現場全員が迷わず動けるよう、事前に周知しておきましょう。
| 重症度 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽症(Ⅰ度) | めまい、立ちくらみ、筋肉のこむら返り、大量の発汗 | 涼しい場所へ移動、水分・塩分補給 |
| 中等症(Ⅱ度) | 頭痛、吐き気・嘔吐、倦怠感、虚脱感 | 涼しい場所へ移動、身体冷却、医療機関を受診 |
| 重症(Ⅲ度) | 意識障害、けいれん、高体温(40℃超) | 直ちに救急要請(119番)、冷却を継続 |
Ⅱ度以上は自己判断で様子を見ず、医療機関への搬送を優先してください。
STEP 1:涼しい場所へ移動させる
作業を即座に中止し、冷房が効いた室内や日陰に移動させます。自力で歩けない場合は無理に歩かせず、複数人で運びます。
STEP 2:身体を冷やす
衣服を緩め、首・脇の下・太ももの付け根(動脈が通る部位)を氷や冷たいタオルで冷やします。霧吹きで皮膚を濡らしながら扇風機で風を当てる方法も有効です。
STEP 3:水分・塩分を補給する
意識がある場合は、スポーツドリンクや経口補水液を少しずつ飲ませます。意識がない・嘔吐している場合は無理に飲ませず、直ちに救急要請してください。
STEP 4:意識・状態を確認し、必要なら救急要請
声かけへの反応、顔色、呼吸を確認します。意識がない、呼びかけに反応しない、けいれんがある場合は119番に連絡し、到着まで冷却を続けます。
工場の熱中症対策は、WBGTを作業強度に応じた基準値以下に保つことが軸になります。空調は対流熱には効きますが、輻射熱が強い工場では空調だけではWBGTが下がりにくいため、遮熱・換気・運用管理を組み合わせることが重要です。
義務化対応を進めながら作業環境を改善するには、「報告体制の整備」「WBGT測定と対応フロー」に加え、WBGTを下げる設備対策が欠かせません。
輻射熱を遮断すれば、既存エアコンの効きも改善し、電気代削減にもつながります。
遮熱シート「サーモバリア」は、輻射熱を97%カット、耐久15年で長期的なコストメリットがあります。
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