2026.08.28
食品工場の暑さ対策|衛生面に配慮しながら屋根からの熱を抑える方法
加熱や蒸煮の工程がある食品工場では、空調能力を上げても暑さが改善されないことがあります。 オーブンやフライヤーから熱が発生し、蒸気で湿度が上がるなか、作業者は衛生服を着用しなければなりません。こうした条件が重なる工程では、体感温度が高くなります。 換気や送風を強化しようとしても、異物混入や粉じんの飛散を防ぐため、工程によっては大型送風機を簡単に導入できません。 こうした問題の背景には、食品工場特有の構造があります。 この記事では、一般的な対策だけでは食品工場の暑さを改善しにくい理由を整理し、施設ごとの衛生管理ルールに配慮しながら改善を目指す方法を紹介します。 この記事でわかること 食品工場で暑さが厳しくなりやすい理由(衛生服・加熱設備・屋根からの輻射熱) 食品工場で実施できる暑さ対策と、衛生面での制約 衛生面に配慮しながら屋根からの熱を抑える方法(遮熱施工) 食品工場への施工事例(フレシュール様・木曽川漁業組合様など) 遮熱施工が向いている工場・向いていない工場の判断基準 食品工場でできる暑さ対策、基本の3つのアプローチ 食品工場の暑さ対策は、設備・個人・運用の3つに分けられます。 それぞれの効果と、食品工場特有の衛生上の制約を確認したうえで導入することが大切です。 設備対策:スポットクーラーや排熱フードで局所的に熱を逃がす 代表的な設備対策には、スポットクーラー、排熱フード、ビニールカーテンによるゾーン分けがあります。 スポットクーラーは、特定の作業エリアを局所的に冷やすのに効果的です。 ただし、食品工場では冷却時に発生するドレン水や、気流による粉じんの飛散が食品汚染につながるおそれがあります。 そのため、設置場所を慎重に選ぶ必要があります。 排熱フードは、加熱設備の周辺で発生する熱を直接屋外へ排出する方法です。発生源への対策として有効ですが、食品製造エリアへの設置や運用には、衛生管理上の制約が生じる場合があります。 ビニールカーテンによるゾーン分けは、食品工場でも比較的取り入れやすい設備対策です。 冷気を区画内にとどめることで、食品製造エリアへの影響を抑えながら温度を管理できます。 個人対策:異物混入リスクを抑えられる保冷ベストや冷感インナー 食品工場の個人対策では、施設の服装規定や衛生管理ルールに適合するものを選ぶ必要があります。 保冷ベスト(アイスベスト):施設の服装規定に適合する製品であれば、衛生服(白衣)の下に着用でき、比較的導入しやすい個人用冷却グッズです。 冷感・吸汗速乾インナー:白衣の下に着用し、汗による不快感を軽減します。 アイススラリー:細かな氷の粒子と液体を混ぜた飲料で、体の内側から冷やす方法です。 一方、ファン付きウェア(空調服)は、気流による異物や粉じんの飛散に配慮が必要です。工程や施設の衛生管理ルールによっては、使用が制限される場合があります。 運用対策:WBGTの計測に基づく休憩と作業ローテーション WBGT(暑さ指数)を把握し、その数値に応じて休憩の頻度や作業時間を調整することは、厚生労働省のガイドラインで推奨されています。なお、一定の暑熱作業では、熱中症のおそれがある作業者を早期に発見するための報告体制や、重篤化を防ぐための手順を整備し、周知することが法令で義務付けられています。 本格的な夏を迎える前から、少しずつ暑さに体を慣らす「暑熱順化」も併せて進めましょう。 こうした運用対策は、設備対策と並行して整備することが大切です。 ただし、運用対策はあくまで作業者の負担を軽減するためのものです。 暑さによる負担を和らげることはできても、工場内の温度そのものを下げる対策ではありません。 設備・個人・運用の対策を組み合わせても、屋根から入り続ける輻射熱は残ります。 この熱源を建物の外側で遮る方法が、次に紹介する遮熱施工です。 対策しても暑いのはなぜ?食品工場に熱がこもる理由 空調能力を上げ、個人対策を取り入れても暑さを感じるのには理由があります。 食品工場には、熱が発生・蓄積しやすい3つの構造的な要因があるためです。 加熱設備と衛生服の着用により熱がこもりやすい 食品工場内には、熱を発生・蓄積させる要因が重なっています。 加熱設備の常時稼働:オーブン・蒸釜・フライヤーなどは、稼働中に大量の熱を放出し続けます。そのため、工場内には常に発熱源がある状態です。 高湿度の環境:蒸気の使用や水洗い作業により、湿度が高くなりやすい傾向があります。湿度が上がると気温以上に暑く感じやすくなり、汗の蒸発による体温調節も妨げられます。 衛生服による放熱の妨げ:白衣・マスク・帽子・手袋は食品衛生上欠かせませんが、体の熱を逃がしにくくします。汗も蒸発しにくいため、体内に熱がこもります。 これらの要因が重なる工程では、熱による作業者の負担が大きくなります。 区画化と気流管理により熱を逃がしにくい 工場内で発生した熱を逃がす方法の一つが、大型換気扇や送風機による換気・送風です。 しかし、食品工場では同じ方法を取りにくい工程があります。 食品汚染を防ぐため、清潔区や準清潔区などの区画を設け、気流を管理している施設があります。 こうした区画や気流管理の条件によっては、換気・送風方法に制約が生じ、発生した熱を逃がしにくくなります。 さらに、大型送風機を稼働させると、異物混入や粉じんの飛散、食材の乾燥といったリスクが生じる場合があります。そのため、導入時は工程ごとの衛生管理ルールを確認しなければなりません。 屋根から輻射熱が入り続ける 暑さの原因は、設備や建物の構造だけではありません。 工場の外からも、絶えず熱が入ってきます。 メーカーが2020年8月29日に行った測定の一例では、未施工の折板屋根の表面温度が60.9℃に達しました。 高温になった屋根から工場内へ、熱が伝わり続けるのです。 高温になった屋根面からの輻射熱は、工場内の熱負荷や作業者の体感温度を高める要因の一つです。 空調などで「冷やす」だけでは、熱が入った後に対処しているにすぎません。 工場内の温度を根本的に改善するには、「熱を入れない」対策も必要です。 暑さの放置は熱中症だけでなく食品安全上のリスクにも直結する 食品工場の温度管理が乱れると、作業者の負担が増すだけではありません。 食品や仕掛品が適切に温度管理されず、菌が増殖しやすい温度帯に長時間置かれると、細菌性食中毒のリスクが高まります。 製造ラインの温度が想定を超えると、食品や仕掛品の温度管理が難しくなり、品質や安全性に影響するおそれがあります。 HACCPプランで温度を管理基準に設定している工程では、その基準を逸脱した場合、あらかじめ定めた改善措置が必要です。 食品工場の暑さは、従業員の体感だけでなく、製品の安全性と企業の信頼に関わる問題として対処しなければなりません。 食品工場の暑さを根本から改善する「熱を入れない」対策 ここまで説明したとおり、食品工場では、屋根からの輻射熱が暑さの一因になっている場合があります。 この熱を建物内に入る前に遮る方法が、屋根への遮熱施工です。 折板屋根の上に遮熱シートを施工し、輻射熱を約97%反射 当社が採用している「スカイ工法」では、金属製の折板屋根の上に高反射遮熱シート「スカイシート」を貼り付けます。シート表面が、入射する輻射熱の約97%を反射します(メーカー公表の反射率)。 施工後の通常運用では、動力を使わず、送風やドレン排水も伴いません。 食品工場における主な衛生上の制約と、スカイ工法の特徴は次のとおりです。 気流による影響:施工後は送風しないため、空調や送風機のような気流を新たに発生させません。 ドレン水:冷却機器ではないため、通常運用時にドレン排水が発生しません。 食材の乾燥:食品製造エリアへ冷風を送らないため、食材に風を直接当てません。 施工箇所:屋根上で施工するため、建物条件によっては食品製造エリアへの影響を抑えながら工事を進められます。 屋根上だけで施工を完結できる場合は、製造ラインを止めずに工事を進められる可能性があります。ただし、施工の可否や操業への影響は屋根の構造や劣化状況、周辺設備によって異なるため、現地での確認が必要です。また、結露への影響は室内湿度や屋根構成、防湿・換気設計によって異なるため、別途検討しなければなりません。 メーカー資料では、折板屋根での実験における最大約11℃の温度差と、冷暖房費約30%削減という参考値が示されています。 ただし、これらは食品工場ではなく、ほかの施設で得られた参考値です(出典:自社施工データ)。 食品工場で得られる効果は、建物や設備などの状況によって異なります。 また、適合すべき衛生基準は施設ごとに異なるため、導入前に各施設の管理基準を確認する必要があります。遮熱施工を行うだけで、特定の認定や基準に自動的に適合するわけではありません。 食品加工工場(フレシュール様)での施工事例 岐阜県関市にある食品開発・製造会社、フレシュール様の工場で、スカイ工法による遮熱施工を実施しました。 施工面積は2,000㎡、施工期間は25日間です。 食品工場でスカイ工法による施工を完了した事例です。 フレシュール様の事例資料には、温度低減や電気代削減に関する具体的な数値が記載されていないため、効果を断定することはできません。ただし、食品工場での施工実績は、「食品工場にも対応できるのか」という不安を解消する判断材料の一つになります。 食品・水産加工の現場では、木曽川漁業組合様(愛知県一宮市・養殖販売加工場・施工面積250㎡・施工期間7日間)への施工実績もあります。 養殖販売加工場への施工事例です。 そのほか、白扇酒造様(岐阜県加茂郡川辺町・酒造材料保管倉庫・施工面積300㎡・施工期間11日間)への施工実績もあります。 遮熱施工はどのような食品工場に向いている? 折板屋根や金属屋根で、夏場に屋根が高温になる スカイ工法は、夏場に表面温度が高くなり、屋根からの輻射熱が暑さの一因になっている折板屋根の工場で検討できます。 メーカーによる測定の一例では、直射日光を受けた未施工の折板屋根が60.9℃に達しました。ただし、屋根温度は天候や屋根材、色、既存の断熱仕様などによって変わります。 食品工場のフレシュール様や、養殖販売加工場を運営する木曽川漁業組合様にもスカイ工法の施工実績があります。 空調を増強しても暑さが改善しない 空調能力を上げても暑さが改善しない場合は、屋根からの輻射熱が一因になっている可能性があります。 特に、日射を受けた屋根の直下で暑さが強い場合や、晴天時に空調負荷が大きくなる場合は、屋根からの熱の影響を確認する必要があります。 遮熱施工で屋根からの熱負荷を抑えることで、空調負荷の軽減が期待できます。 衛生管理上、送風や散水を使いにくい 異物混入や粉じんの飛散、食材の乾燥などへの配慮から送風が難しい環境では、施工後の通常運用で動力や送風を必要としない遮熱施工が選択肢になります。 屋根上で施工するため、建物条件によっては、食品製造エリアへの影響を抑えながら導入を検討できます。 製造ラインを止めにくい 食品工場では、生産計画や温度管理の都合から、製造ラインを長期間停止できないことがあります。 スカイ工法は屋根上で施工するため、屋根の構造や劣化状況、周辺設備などの条件が合えば、操業を続けながら工事を進められる可能性があります。実際の施工方法や工程は、現地調査を踏まえて決定します。 注意:屋根以外の熱が主な原因なら、別の対策を優先する 工場内の暑さが主に機械・炉・設備の発熱によるものであれば、屋根への遮熱施工だけでは十分な効果を得られないことがあります。 この場合は、先に機械・設備の放熱や輻射熱への対策を検討することが重要です。また、空調能力そのものが不足している場合は、遮熱施工だけで目標温度に達しない可能性があります。 RC造の陸屋根や屋根上に設備が密集している建物など、スカイ工法を施工できない、または施工が難しいケースもあります。屋根材、既存の断熱仕様、屋根の劣化状況、足場の要否を現地で確認したうえで、適した工法を判断します。 まとめ:食品工場の暑さ対策は、屋根から入る熱を断つことから検討しよう この記事のポイント 食品工場の暑さ対策には、設備・個人・運用の3つがあり、衛生上の制約を考慮しながら組み合わせることが大切 食品工場の暑さは、加熱設備・衛生服・屋根からの輻射熱などが重なって生じるため、原因に応じた対策が必要 食品や仕掛品の温度管理が乱れると、熱中症だけでなく食品安全上のリスクにもつながる スカイ工法は、施工後の通常運用で送風やドレン排水を伴わず、フレシュール様をはじめ食品関連施設への施工実績もある 屋根からの熱の影響が大きい折板屋根の工場では、遮熱施工を検討できる。一方、機械の発熱や空調能力不足が主な原因なら、別の対策を優先する 「空調能力を上げても暑さが改善しない」「自社の工場に遮熱施工が向いているかわからない」という場合は、まず屋根や設備の状態を現地で確認してもらうのが確実です。 食品工場への施工実績がある当社では、現地調査とお見積もりを原則無料で承っています。まずは一度、現地を見せてください。
















