2026.05.18
投稿日:2026.05.18 最終更新日:2026.05.18
工場・倉庫で、空調や換気を強化してもWBGTが下がりにくい。
そんなとき、原因は「冷房が足りない」だけとは限りません。
WBGTは、いわゆる「気温」だけで表せる指標ではありません。
暑さは、周りからの熱(輻射)、湿り気、風のあり方など、いくつかの要素が組み合わさって決まります。
つまり、現場ごとに「いちばん足を引っ張っているところ」が違います。屋根からの熱、熱い空気の溜まり、天井が高くて空調が届きにくいこと、搬入口から入る外気など、主因がどこかで、打つ手も大きく変わります。
静岡大学との連携実験や現場のサーモグラフィの知見に基づき、遮熱施工を手がける山創株式会社(サーモバリア施工店)がまとめています。
山創株式会社 代表取締役
2016年創業以来、遮熱シート「サーモバリア」施工一筋で全国40都府県、1,200件以上の実績を持つ。工場・倉庫の「エアコンが効かない」「電気代が高すぎる」といった作業環境の悩みに、特許取得のスカイ工法と高性能遮熱シート「サーモバリア」で応え続ける。
目次

現場では複数の要因が重なることが多いですが、整理の軸として次の4つに分けて見ます。
それぞれの仕組みと、自社の現場への当てはめ方を順に確認します。
工場・倉庫で多く使われている金属折板屋根は、夏場の日射を強く受け、表面温度が60〜70℃にまで上昇することがあります。
出典:建築研究所 研究資料
実際に、施工前にサーモグラフィで撮影した現場でも、屋根表面が約60℃を記録した例があります。
高温になった屋根・天井は、室内へ「輻射熱」として熱を放射し続けます。
エアコンで空気だけ冷やしても、屋根や天井そのものが熱いままだと、体感の暑さは和らぎにくく、WBGTの数値もなかなか下がりません。
輻射熱はWBGTの計測値(黒球温度)に直接表れる要素でもあります。
折板屋根の遮熱を行った工場の査読論文では、屋根表面温度が平均21.8℃低下すると、天井面温度が平均12.6℃、室温が平均5.7℃低下したと報告されています。
屋根表面温度の変化が天井・室内環境に直接波及することを示すデータです。
なお、熱中症対策の文脈でも輻射熱は典型要因のひとつです。
倉庫は屋根面積が広く影響が出やすく、常温倉庫・物流センターなど空調がない施設では、作業者のWBGTが高くなる主因になりやすいです。
熱い空気は上に溜まりやすく、換気口や出入口が少ないと、熱も湿り気も外に出にくいままになります。
厚生労働省の「職場における熱中症予防マニュアル」でも、熱中症が起きやすい環境として「高温・多湿・輻射熱・無風」が挙げられています。
湿り気が抜けないと、WBGTの数値にも響きやすいという点を押さえておいてください。
工場では生産機器からの排熱が熱気滞留を加速させ、倉庫では大空間ゆえの換気経路不足と搬入口の開閉が主な原因になりやすいという違いもあります。
倉庫や工場が広くて天井が高いと、エアコンの冷気が、人が立って働く高さまで届きにくいことがあります。
上の方だけ暑く、足元はそれほどでもない、といった上下の差が出やすく、同じフロアでも場所によって暑さが変わります。
空調学会の研究でも、工場・作業場の大空間で温度成層が形成されることが確認されています。
厚生労働省の2023年度研究でも、倉庫業では「屋外環境と連絡していたり階層構造だったりするため、空調設備の効果が不十分になりやすい」と整理されています。
空調を増やしても、屋根や天井が高温のままだと(輻射熱のもとが残ると)、費用に見合うほどWBGTが下がらない、という現場もあります。
物流施設では有効天井高が5m以上になるものも多く、一般オフィスとは比べものにならない空気量を冷やす必要があるため、空調効率が下がりやすい条件にあります。
空調を入れていない常温倉庫では、換気・循環・局所冷却のみで夏場の大空間のWBGTを下げ切ることは難しい現実もあります。
大型シャッターや搬入口が頻繁に開閉する工場・倉庫では、高温の外気が室内に流入し続けます。
同時に内部の冷気も外に逃げ、空調効率が大きく下がります。
ダイキン工業の省エネ大賞事例では、シャッター開放時の外気侵入が空調負荷の大きなボトルネックになっていることが紹介されています。
省エネ法の判断基準や関連のチェックリストでも、開口部の縮小・密閉・エアカーテンなどで外気侵入を抑えることが確認項目に含まれます。
出典:省エネ法判断基準
開口部からの外気侵入を抑えるのに使われるのが、エアカーテンや高速開閉のシャッターです。
開閉が速く、開放時間を短くできるタイプもあり、空調負荷の抑制に役立ちます。
ただし、これらはあくまで外気の侵入を抑える対策であり、屋根・天井の熱源には直接作用しません。
物流倉庫ではトラック搬入が高頻度で発生し、シャッターの開閉時間が工場より長くなりやすいため、この原因が特に大きく出ることがあります。

主因が違えば打つ手も変わります。
輻射熱が主因なのにスポットクーラーだけ導入する、換気不足が主因なのに遮熱だけ施工するといった対策では、改善が限定的になりがちです。
当てはまる項目が多いカテゴリを、まず疑う目安にしてください。
複数のカテゴリに多く当てはまる場合は、原因が一つではない可能性があります。
特に「輻射熱」と「換気不足」が重なる現場では、空調だけを増強してもなかなか改善しません。

「空調も換気もしたのに、WBGTがあまり下がらない」と感じるとき、対策が悪いのではなく、「いま冷やしているところ」と「暑さのもと」がずれていることが多いです。
WBGTは温度計の「気温」だけでは表せない暑さの指標です。以下では式のイメージだけ押さえます(細かい計算は不要です)。
WBGT(湿球黒球温度)は、暑さの指標のひとつです。
式の中には、湿り気の影響と、周りからの熱を拾う黒球の値が入ります。
覚えておきたいのは、係数の大きさの差です。
屋内の工場・倉庫でも、作業位置に直射日光が当たるかどうかなどで式の扱いが変わります。実務では、厚生労働省や環境省のガイドラインに沿って測定・評価してください。
式を見ると、日射のある条件では「いわゆる気温(乾球)」の係数は0.1なのに対し、黒球まわりは0.2〜0.3と大きくなります。
室温だけが少し下がっても、WBGTが同じ幅で下がるとは限らない理由がここにあります。
厚生労働省の2026年ガイドラインでは、対策の考え方として、先に熱のもとを抑え、続いて換気や冷房、という流れも示されています。
空気を整えることと、屋根・天井の熱のもとに手を入れることは、役割が別です。
下の表は、どこに効きやすいかの目安です。
空調を長時間稼働させれば表面温度も多少変わりますが、高温の屋根・天井そのものには直接届きにくいと考えてください。
| 対策の例 | 主に効きやすいところ | 輻射(黒球まわり)へのイメージ |
|---|---|---|
| 空調(エアコン) | 室内の空気 | 小(屋根そのものは別問題) |
| 換気ファン | 溜まった熱気を外へ | 限定的(熱のもとは残ることも) |
| スポットクーラー | 局所の空気 | 小(同上) |
| エアカーテン | 外気の侵入を減らす | 小(輻射そのものとは別の話) |
| 遮熱施工(屋根・天井) | 屋根・天井の熱の出どころ | 大(ここを抑えにいく) |
建築研究所の資料でも、室温が同じでも周りの表面の熱さで体感が変わる例が示されています。
出典:建築研究所 研究資料
室温だけを見ていても、屋根や天井が熱いままだとWBGTは下がりにくい——この点が、空調を増強しても改善しない現場の根本的な理由です。空調は「空気側」への対策、遮熱は「熱の出どころ側」への対策と、役割が分かれています。

対策の流れは、次の順番で整理できます。
1を先に手がけると、2・3の効果も安定しやすくなります。
役割の違いは次の表のとおりです。
| 対策 | 主な作用 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 遮熱施工(屋根・天井) | 輻射熱の発生源を抑制 | 根本対策(優先) |
| 換気改善・局所冷却 | 熱気の排出・局所温度の低減 | 補助対策 |
| エアカーテン・シャッター | 外気侵入の防止 | 補助対策 |
換気や搬入口まわりの対策だけでは、高温の屋根・天井が熱いままになりがちです。遮熱の代わりに行うのではなく、どこから先に手をつけるか——順番の問題です。

屋根・天井への遮熱施工は、輻射熱の「もと」を抑える根本対策です。
遮熱シートはアルミニウム箔の高い反射率(0.95〜0.97)を活かして輻射熱をはね返し、屋根・天井面が室内へ放射する熱量を大幅に抑えます。
山創株式会社が手がけるサーモバリア(スカイ工法)の主な実績・性能は次のとおりです。
遮熱塗料を試したが効果が不十分だったという声も、相談のなかでよく聞かれます。
塗料は施工ムラや経年劣化で効果が低下しやすいのに対し、サーモバリアはシートを貼り付ける工法のため施工品質が均一で、長期間性能を維持できます。
雨漏り防止と遮熱を同時に施工できることも、現場の手間を減らす利点のひとつです。
常温倉庫や物流倉庫は屋根面積が広く、輻射熱の影響が特に大きいため、遮熱施工の効果が体感・数値ともに出やすい現場です。
面積の広い屋根・天井から優先的に施工することで、最初の段階で最も大きな改善を得やすくなります。
なお、遮熱シートと遮熱塗装の違い・選び方は、次の関連記事でも整理しています。
遮熱塗装と遮熱シートを比べようとすると、カタログの数字はあっても「何をどう比べればいいか」がわかりにくいのが実情です。 複数の業者に問い合わせると、それぞれが自社の工法を勧めてくる。 効果の数字が両者で違いすぎて、そもそも同じ基準で比べられているのかどうかも怪しい。 費用差はわかっても、何がど
遮熱で屋根からの熱のもとを抑えたあと、天井付近に溜まった熱気を換気で外に出したり、スポットクーラーや大型ファンで局所を冷やしたりすると、改善が安定しやすくなります。
ピッキングなど作業位置が決まっている倉庫では、スポットクーラーの効きも出やすいです。
厚生労働省の2026年ガイドラインでも、まず熱源の遮断、ついで通風・冷房、という順番が示されています。
常温倉庫など空調設備のない施設では、換気・循環が現実的な主力の選択肢になります。
搬入口からの外気が主な原因だと考えられる現場では、エアカーテンや高速開閉シャッターで侵入を抑えます。
開閉が速く、開いている時間を短くできると、空調負荷の抑制にもつながります。
エアカーテンは開口部に気流の壁を作り、外気の侵入と室内の冷気の流出を同時に抑えられます。
ただし、いずれも「外気の出入り」への対策であり、屋根・天井が熱いままという問題には直接届きません。
搬入口だけ手を打ってもWBGTがあまり下がらないときは、輻射熱(屋根・天井)側をあらためて確認することをお勧めします。
遮熱で屋根まわりを抑えたうえで、換気と開口部対策を足すと、それぞれの効きが揃いやすくなります。
工場・倉庫のWBGTが下がらない根本には、「空気を冷やす設備」では届かない輻射熱の問題があります。
主因を先に特定して、遮熱・換気・開口部対策を役割分担で組み合わせることが、確実な改善につながります。
山創株式会社は、静岡大学との連携実験(室温約9℃ダウン確認)と現場のサーモグラフィ測定をもとに、輻射熱状況に合った遮熱シート施工をご提案しています。
「輻射熱が原因かどうか確かめたい」「対策の優先順位を整理したい」という段階からご相談ください。