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工場・倉庫の夏の電気代を下げたい|コストゼロから始める2段階の削減策

夏場になると、工場や倉庫の電気代が一気に上がることがあります。

「節電しているつもりなのに請求額が下がらない」 「冷房の設定温度を上げたいが、現場の暑さも無視できない」 「空調更新・LED化・遮熱など、何から手をつけるべきかわからない」

このように悩んでいる企業は少なくありません。

工場・倉庫の夏の電気代が高くなる原因は、冷房の使いすぎだけではありません。夏季単価の上昇、デマンドによる基本料金の増加、屋根や外壁の蓄熱による冷房負荷の増大など、複数の要因が重なって請求額を押し上げています。

そのため、やみくもに節電したり、いきなり設備投資をしたりしても、思ったほど効果が出ないことがあります。大切なのは、自社の電気代が高くなっている原因を見極めたうえで、コストゼロでできる対策と、設備投資が必要な対策を順番に整理することです。

この記事では、工場・倉庫の夏の電気代が高くなる理由から、今日からできる運用改善、契約見直し、高効率空調・LED・断熱・遮熱といった設備投資の優先順位までわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 夏の電気代が高くなる3つの理由
  • コストゼロの運用改善・契約見直しと、設備投資の違い
  • 高効率空調・LED・断熱・遮熱の削減率と費用の目安
  • 空調年式・屋根・照明・補助金の4軸で自社の優先順位を絞る方法
  • 省エネ補助金を見積と並行して動かすときの注意点
この記事を書いた人
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加藤雅之(山創株式会社 代表取締役社長)

山創株式会社 代表取締役
2016年創業以来、遮熱シート「サーモバリア」施工一筋で全国40都府県、1,200件以上の実績を持つ。工場・倉庫の「エアコンが効かない」「電気代が高すぎる」といった作業環境の悩みに、特許取得のスカイ工法と高性能遮熱シート「サーモバリア」で応え続ける。

【まず知っておきたい】工場・倉庫の電気代はなぜ夏に高くなる?

夏に請求が跳ね上がるのは「冷房をたくさん使うから」だけではありません。①料金の単価、②基本料の決まり方、③冷房負荷そのもの、の3つが同時に効くからです。順に見ていきます。

① 夏季(7〜9月)は電力量料金の単価が上がる

多くの法人向け料金メニューでは、7月1日〜9月30日を「夏季」として電力量料金の単価を他の季節より高く設定しています。夏季単価はその他季節と比べて5〜10%程度高い例が多く見られます(契約タイプで前後)。

工場・倉庫は月間使用量が大きいため、数%の単価差でも請求額への影響は大きくなります。節電で使用量を減らしても、夏季の単価そのものは下がらないため、請求額の重さを軽くしきれない場合があります。

② 夏のピーク需要が基本料金を押し上げる

基本料(契約電力)があるタイプでは、月のなかで一番大きかった需要(ピーク)が基本料のもとになります。夏場に複数設備を同時に動かして瞬間ピークが上がると、その水準に合わせた基本料がしばらく続きます(実量制では直近12か月のピークが土台になるのが一般的)。

契約電力が一段上がると、月あたり数万円〜、年では数十万円以上動くことも珍しくありません。「その月だけ高い」ではなく、その先の月の基本料にも響きうる点がポイントです。

③ 建物が蓄熱し、冷房がいくらかけても追いつかない

工場・倉庫の屋根や外壁は、夏の直射日光を長時間受けて蓄熱します。金属屋根では表面温度が60〜70℃に達することがあり(建築研究所 研究資料)、高温になった屋根・壁が室内に向けて輻射熱を放射し続けます。

結果として「冷房をかけても室温が下がらない」「冷やすのに想定以上の電力がかかる」という状態になります。屋根面積が広い大型倉庫ほど、この影響は大きく出ます。

屋根から入る熱の内訳は、輻射が全体の約75%、伝導が約5%前後(建物形状・稼働・気象で変動)。断熱材は伝導熱には効きますが、輻射熱は断熱材だけでは十分に止められません。屋根や外壁からの熱侵入そのものを抑える対策が、冷房電力の削減には直結します。

工場では製造ラインの機械・モーターが内部発熱源として冷房負荷を押し上げ、倉庫では大型シャッターの開閉による外気流入が効いてきます。

まずコストゼロからできる2つのこと

設備を入れ替えなくても今日から動ける対策が2つあります。まずここから始めて、それで足りなければ設備投資に進みます。

※削減率は建物の条件・使用実績により変動します。

熱中症対策や作業環境づくり全般は「工場の暑さ対策」「倉庫の暑さ対策」の記事に譲り、ここでは電気代に直結する手立てに絞ります

① 運用改善|コストゼロで今日から始められる

設備を入れ替えなくても、今の設備の使い方を変えるだけで電気代を下げられます。効果の出やすいものから順に確認してください。

設定温度を2℃上げる

室温を26℃から28℃に上げると、空調の消費電力は1.6〜5.4%削減されます(省エネの公的資料)。2℃の違いは現場では体感しにくいことも多く、気流や湿度を整えれば快適さを保ちながら設定を上げられます。まず試せる最初の一手です。

フィルター清掃

フィルターが詰まると空調の効率が落ち、同じ設定温度でも余分な電力を使います。清掃だけで0.6〜1.9%の節電効果が出る例があります。室外機まわりに段ボールや荷物が積まれていたり、直射日光が当たっていたりしないかも合わせて確認してください。

ゾーニング

工場・倉庫は面積が広い分、冷やす必要のない場所まで一律に設定を下げていることがあります。作業員が集中するエリアは低め、通路や荷置きスペースは高め、と区域ごとに設定温度を分けるだけで無駄な冷却を減らせます。

スポットクーラー

ピッキングや組み立てなど、人が一か所に集まる作業には、その場所だけを冷やすスポットクーラーが有効です。建物全体を冷やすより消費電力を抑えられます。レンタルから試せるため、効果を確認してから導入判断ができます。

搬入口の気密化(倉庫向け)

シャッターや搬入口が開くたびに外の熱気が流入し、空調効率が落ちます。ドックシェルター(トラックと建物の隙間を塞ぐ装置)やビニールカーテンで開口部を塞ぐことで、他の運用改善の効果も持続しやすくなります。

② 契約・料金見直し|使用量を変えずに請求額を下げる

使う量(kWh)そのものは変えず、「いくら払うか」の組み方を見直す対策です。

デマンド管理

基本料金(契約電力)は、その月の30分単位の最大需要(ピーク)で決まります。空調・コンプレッサー・加熱設備などが一斉に起動する時間帯を避けるだけで、ピークの更新を防げます。

  • やること:朝の一斉起動を10〜15分ずつずらして、瞬間的な重なりを減らす
  • 設備投資ゼロでできる。デマンドコントロール単独で平均1.9%削減の例あり(資源エネルギー庁「省エネ定期報告ファクトシート 47.倉庫業」)
  • 管理が煩雑な場合はデマンドコントローラー(自動制御機器)の導入も選択肢

料金プラン・小売会社の切替

電力小売の全面自由化(2016年〜)以降、契約先や料金メニューを変えるだけで同じ使用量でも請求額が変わるケースがあります。

  • まずやること:直近12か月の請求書を手元に用意し、今のプランの「基本料」「電力量料金単価」「夏季加算の有無」を確認する
  • 次のステップ:電力比較サイトや省エネ診断で現行プランとの差を試算。複数社から見積もりを取る
  • 注意:切替後、新しい条件が請求に反映されるまで1〜2か月かかる

この対策だけで削減できる幅には限界があります。数十%単位の改善を目指すなら、次の設備投資が必要です。

大きな改善が期待できる設備投資

運用改善・契約見直しで削減しきれない部分には、設備への投資が必要です。選択肢は高効率空調・LED照明・断熱材・屋根の遮熱の4つですが、すべてやる必要はありません。施設の状態を確認すれば、どれから動くかが絞れます。

対策 削減率の目安 費用の目安 施工期間の目安
高効率空調への更新 空調消費電力の10〜30% 100〜500万円/台 1〜3日/台
LED化 照明消費電力の約50% 50〜300万円 数日〜数週間
断熱材の追加・補強 冷暖房費の10〜20% 100〜500万円 数日〜数週間
屋根への遮熱施工 冷暖房費の約30% 施設規模で変動 稼働中でも施工可

※削減率は施設の状態・稼働状況により変動します。

空調が10年以上なら更新を検討

空調の効率は年々落ちており、10年以上経った機器は高効率機種への更新が合理的です。更新後は同じ冷却効果でも消費電力が10〜30%程度改善する例があります。

またはHVLSファン(大型低速循環ファン)で空気を循環させるのも1手です。広範囲に気流を送ることで空調の設定温度を1〜2℃引き上げられるケースがあり、設定温度1℃の引き上げで消費電力の約10%削減につながります。遮熱施工と組み合わせると効果が出やすく、天井高5m以上の大空間に向いています。国産モデルとして株式会社西田技巧の「THE FIRST FAN」があります。

ただし、空調の更新やファンの導入は設備の効率を上げる対策であり、建物が蓄熱している問題そのものには届きません。「新しい空調に換えたのに夏は相変わらず暑い」という場合、屋根・壁からの熱侵入が続いている可能性があります。

点灯時間が12時間以上ならLED化を優先

蛍光灯からLEDに切り替えると消費電力が約50%削減されます(資源エネルギー庁2025年)。1日12時間以上の点灯・24時間稼働倉庫・高天井施設は効果が出やすく、他の対策と並行して進められます。

LED照明は蛍光灯より発熱量が少ないため、照明自体が室内温度を押し上げる効果も小さくなります。照明台数が多い工場・倉庫では、LED化が冷房負荷の軽減にも間接的につながる場合があります。

断熱材が薄い・ない場合は追加・補強を検討

断熱材は、屋根・壁から伝わる伝導熱を抑えます。工場・倉庫では断熱材が入っていない、または薄い施設も多く、夏の熱侵入を受けやすい状態になっています。グラスウールやロックウールを追加・補強することで、室内への熱侵入が減り、冷房負荷の軽減につながります。

なお、断熱材は伝導熱には効きますが、輻射熱には効果が限られます。屋根から室内へ放射される輻射熱が強い施設では、断熱材と遮熱施工を組み合わせると効果が出やすくなります。

遮熱対策で熱供給を根本から下げる

夏の電気代が高くなる理由のひとつが「建物の蓄熱による冷房負荷の増大」です。屋根・外壁が高温になって室内へ輻射熱を放射し続ける限り、冷房をかけても熱の供給源が残ります。

遮熱対策は、屋根そのものに手を入れて輻射熱の発生源を抑える方法です。高温になった屋根が室内へ放射する熱を反射することで、冷房が処理すべき熱量が減り、空調の消費電力が下がります。折板屋根・無断熱・屋根面積が大きい施設ほど効果が出やすいです。

遮熱施工には、アルミ箔系の遮熱シートと屋根面に塗る遮熱塗装の2種類があります。どちらも輻射熱を反射する仕組みですが、効果・耐久性・費用・施工方法が異なります。

山創が手がけるスカイ工法は、折板屋根への遮熱シート施工です。断熱材なしの折板屋根を持つ工場・倉庫では、冷暖房費約30%削減・室内温度最大約11℃低下の実績データがあります(屋根材・稼働状況・規模により変動)。工場の稼働を止めずに施工できるケースが多く、倉庫は屋根面積が広いほど投資対効果が出やすい傾向があります。

2種類の違いと自社に合う選び方は、別記事で比較しています。

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自社に合う対策の優先順位を絞る4つの確認ポイント

設備投資の選択肢が4つあると「どれから手をつけるか」が分かりにくくなります。

施設の状態に加えて、省エネ補助金が使えるケースでは申請スケジュールも優先順位に影響します。

以下の4点を確認すると、自社が先にやるべき対策が1〜2つに絞れます。

確認ポイント 当てはまる場合に優先される対策
空調が10年以上経っている 高効率空調への更新
折板屋根・無断熱または断熱材が薄い 遮熱施工または断熱材の追加
照明の点灯が12時間以上 LED化
今年度の補助金公募に間に合う 補助金対象工事を先行させる

複数に当てはまる場合は、削減効果と費用対効果を比較して優先順位を決めます。4〜5月に確認を始めれば、今夏のピーク(7〜8月)に間に合う対策を選べます。

省エネ補助金を活用するときの注意点

設備投資の費用を抑えるために、省エネ関連の補助金を活用できる場合があります。

代表的なものを以下に挙げます。

  • 省エネルギー投資促進支援事業費補助金(経済産業省・SII運営):工場・事業所向けの省エネ設備投資に活用できます。高効率空調・断熱・遮熱施工が対象になる場合があります
  • ものづくり補助金:製造業・サービス業の設備更新が主目的の補助金です。設備更新と一体的に省エネ改善を行う場合に対象になる可能性があります。省エネ専用ではないため、適用可否は事前に確認が必要です

補助金を活用する際は、申請から審査・交付決定までに時間がかかることに注意が必要です。多くの補助金では、交付決定の前に施工を始めると補助対象外になります。

「見積もりを先に取る」→「補助金の要件・スケジュールを確認する」→「申請・審査」→「交付決定後に施工」という順番が基本です。

まとめ:この記事でわかったこと

この記事のポイント
  • 夏の電気代が高い理由は「単価・デマンド・建物の蓄熱」の3つが重なっているから
  • まずコストゼロの運用改善・契約見直しから試せる
  • 設備投資は高効率空調・LED・断熱材・遮熱の4つで、施設の状態で優先順位が決まる
  • 補助金は「交付決定前に施工を始めない」が基本。見積もりと並行して早めに確認する
  • 4〜5月に動き始めれば今夏のピークに間に合う

「節電しているのになぜ高いのか」という疑問は、単純に使用量だけを見ていては解けません。

単価の仕組みとピーク需要が基本料に跳ね返る構造、そして冷房をかけても室温が下がりにくい建物の蓄熱問題——この3軸を理解してはじめて、どの対策をどの順番でやれば効くかが見えてきます。

コストゼロでできることを先に試して、それでも足りなければ設備投資へ。設備投資も「とりあえず全部」ではなく、空調年式・屋根の状態・照明の点灯時間を確認すれば、自社が先にやるべき対策が1〜2つに絞れます。補助金を活用するなら、見積もりと並行して申請スケジュールも早めに確認してください。

屋根からの輻射熱が気になる、遮熱施工が自社に合うか確認したいという場合は、山創株式会社にご相談ください。現場の輻射熱状況を確認した上で、施工の効果が見込めるかどうかの判断から対応しています。

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